昨日・今日はミシガン大学の公衆衛生学部(Shool of Public Health)で開かれた会議を聴きに行った。


テーマは"Health, Race and Media: The Power of Perception"というもの。少数人種に多い健康上の問題やメディアの影響について9つの講演が開かれた。


昨日聴いたのは「少数人種の子供は健康上のリスクが大きい?: メディアの影響はプラスかマイナスか」。発表者はCenter on Media and Child Health(CMCH)という組織のディレクター、マイケル・リッチさん(写真)。まず驚いたのは、子供がいる家庭の51%でテレビがつけっ放しということ。63%が食事中もテレビを観ている。10〜18歳の子供を調べたところ、自宅にパソコンがある子供は勉強ができ、ベッドルームにテレビがある子供は相対的に勉強ができないそうだ。実際は、インターネットも使い方を間違えると悪影響があるはずだ。自宅にパソコンがある家庭は親の学歴や所得が高いので子供の学習習慣にも影響を与える---というのが本当の理由かなと思った。


それはさておき、面白かったのが、健康に悪影響がありそうな行為の相関を調べたもの。「メディア接触と攻撃性」は「喫煙と健康」に比べて相関が倍だそうだ。メディアを通じて性表現に触れている子供はそうでない子供より2年早く性行動を始めるとか。売り上げ上位10位までのゲームソフトのうち、89%は暴力的だとか。論文や実験結果を引用しながら「やばそう」な数字がどんどん出てくる。


解決策も示されていたのがよかった。こういう問題を論じると必ず「メディアを規制すべき」と主張する人が出てくる。気持ちは分かるが表現の自由を規制するのはいかがなものか、という反論もまた予想される。リッチさんの持論は「政府が規制するのは上手くいかない」というのが持論。その代わり、親が有害なソフトを子供に買い与えないとか、子供にメディア・リテラシーをつけさせるのが良いという。


医療分野に転身する前はハリウッドで映画制作に携わっていたリッチさんにとって、メディア・リテラシー教育は得意分野だ。東海岸の諸州で高校生向けのメディア・リテラシー教育を行っている。例えば、大手メディアがいかに市場を独占しているか説明してやり、子供たちはその情報を元に短い映像作品を作る。10代の映画女優に劇中で喫煙させることが、CM以上に効果的なマーケティングだと教えられた女子学生は、喫煙が原因で亡くなった親戚の写真を示しながらタバコ会社に抗議のメッセージを読み上げる。女子高生数人がファッション雑誌が提供する美の基準に抗議して雑誌を捨てる・・・。現実がどんな仕組みで動いているか10代のうちに知っておけば、メディアを規制せずとも、自分で適当な距離を持って付き合っていけるだろう。こういう風に個人に力をつけるという解決策はいいなと思う。


他の講演についてはまた、明日。