アメリカ企業におけるジェンダー・ダイバーシティの問題について。

まだ2週間しか経っていないが、本や論文を読んだり人に話を聞いているうちに、アメリカでもジェンダーと仕事に関して日本と同種の問題があることが分かってきた。

・職場での"つきあい"
日本企業では、飲みに行かないと仕事で重要な情報を得られないとよく言われる。アメリカのワークライフバランス事情に詳しく、大企業向けコンサルティングも手がけているR教授に話を聞いたら「日本や韓国ほどではないけれど、アメリカにもそういう企業文化はある。フットボールを見に行ったりバスケをやったり。女性はこういう時に参加しにくいから疎外感を覚えている」そうだ。

・社内託児所はあまり使えない
「通勤に時間がかかるから、保育所は自宅近くにある方が好まれる」というのが前出のR教授の弁。

・企業の育児支援は形だけになりがち
アメリカ企業の育児支援というと、日本には先進事例ばかり紹介されがちだ。でも実際は「『育児支援しています』と主張する企業のほとんどが『保育園の場所』など情報提供をしているだけ。これは本当の支援とは言えない」とR教授は手厳しい。話を聞いていて、根本的な問題は日本とそっくりなのに驚いた。

・子供が出来たらやはり妻が退職する
ワークライフバランスジェンダーに関する本や論文でよく参照されている "Unbending Gender" という本は以下の4種類の読者を想定している。

①子育てのため短時間勤務にしたいが、上司にダメと言われた女性
②出産後、同じ職種でパートタイムになったら、面白い仕事が回ってこなくなり結局退職してしまった女性
③自分1人の稼ぎでは家計を支えきれないので妻が再就職することになったが、その状況に不満を感じている男性
④多忙な企業役員と結婚し専業主婦になった女性。夫は過労死してしまい、会社の冷たい対応に愕然としている

いずれも仕事と家庭の両立に悩むアメリカのビジネスパーソンの典型のようだ。これって日本の話? と思うほど、どこかで聞いたことがある悩みばかり。

ところでアメリカにも「だめんず(=ダメ男)」はいるようだ。 "The Effects of Transitions in Marital Status on Men's Performance of Housework (Gupta, 1999)" という論文(男性が結婚した場合と結婚をやめた場合について、家事時間の増減を調査したもの)に興味深い現象が紹介されていた。女性が家計の半分以上を担っている場合、男性の家事時間は平均より少なくなるという。稼がない分、家事をやってもいいのに、どうしてこうなるのか。

彼らは「充分に稼げない=男らしくない」現状に対する反抗として、「本来女の仕事であるべき」家事をやらないという行動に出るのではないか、と筆者は推測していたが、これってまさに「だめんず」だと思う。