メリーランド大学のジャーナリズム学部で教鞭を執る女性教授に会ってきた。


ワシントン・ポスト記者から大学教授に転身し、同学部で初めて女性のTenured Faculty(終身在職権付教授)となった人物。


私は2年前に、フルブライトの客員研究員として所属する米国の大学を探していた。知人に紹介されてお願いメールを送ってみたところ、この教授が二つ返事でホストを引き受けてくれたのだ。結局、家族の事情でミシガン大学に所属することにしたが、親切にしてもらったお礼を言いたかった。


上品な婦人という形容がよく当てはまる方だった。数年前、フルブライトのシニア・レクチャラーとして中国の大学でも教えていた。お礼を伝えた後はお喋りに移行。中国共産党中央宣伝部はメディアをどこまでコントロールしているのか。米国のジャーナリズム研究者は監視されないのか、と尋ねると、現地での興味深い体験を教えてくれた。


ジャーナリストから研究者に転身---というキャリアにも興味があったので尋ねてみたところ、これは、やはり珍しいそうだ。記者の仕事と両立してジョージ・ワシントン大学歴史学部で博士号を取得している。「博士号取得には10年"も"かかった」と言っていたが、日本では新聞記者がフルタイムで仕事をしながら大学院に通うなんて、とても考えられない。社会人向け大学院が充実した米国でも、よほどのやる気がなくては難しいだろう。


私が質問されたのは「日本の新聞や雑誌は部数減を食い止めるためにどんな策を取っているか」、「日本女性の未婚化が進んでいると聞いたが本当か」など。インターネットの普及で既存の新聞・雑誌が売れなくなっているのは日米共通の現象である。私の勤務先が最近開設したウェブサイトのことや、経済紙が女性読者獲得を目指して作った広告の話をした。米国でも某大手メディアが、思い切ったビジネスモデルの改革を予定しているそうだ。


新聞や雑誌の部数に関して、日本メディアは日本語人口の減少という課題があるんです、と言うと驚いていた。日本の人口減少とそれがもたらした様々な変化は、これまでも何人かの米国人に話して「本当?」と言われた。まだ一般にはあまり知られていないようだ。

インターネットとメディアといえば、米国ではホワイトハウスがブロガーにプレスパスを出している。「日本では『米国の先進性を示す事例』として語られているが実際はどうですか」と聞いてみた。背景事情を聞くと、実はそれほどすごい話ではないそうだ。


2時間弱あれこれお話して、別れ際に小さな日本土産を渡したら「私もお土産がある」と自著にサインをしてくれた(写真)。親切な人は本当にどこまでも親切である。私も万が一、将来、偉くなったら、こんな風に優しくて上品な婦人になりたいものだが、なかなか難しそうだ。