メキシコのゼミのクラスメートが私の家に来て、夕食をとったりお茶を飲みつつ5時間半、喋り続けた。


お決まりの恋愛話の後、ドラッグの話題に。20代の学生たちの夜の生活実態を聞いて驚く。夜遅くまで図書館で勉強してると思ったのに、まじめな子だけではないようだ。


階級ごとに使用するドラッグが異なる、と聞いたことがあるのを思い出す。「それって本当?」と尋ねると、お金持ちから貧乏人まで、どんなドラッグを使っているか教えてくれた。


原産地は想像通りコロンビア。そこから主に3つのルートをたどって米国内に運ばれる。一つ目のルートはフロリダ。二つ目はカリフォルニア。三つ目はテキサス。最北のミシガンまで運ばれる間には、幾多の人を経由し不純物(砂糖や小麦粉など白い粉)の度合いが高くなっていく。「Ann Arborではすごく低品質なドラッグに、200ドルものお金を払ってる」と彼女は話す。


何でそんなに詳しいのかと聞けば、友人に薬物常習者や中毒者がいるためだそうだ。聞けば彼女が育った街には、10代で薬の売人になる人、薬のために売春したり高校を中退する人が多かったという。同級生の女生徒のうち30%が在学中に妊娠すると聞いて言葉を失う。宗教上の理由や貧しさから中絶せずに10代で母親になる女子高生も少なくないという。高校内に託児所があるという話はほとんど冗談に聞こえた。


連邦政府がほとんど育児支援をしないのに、米国女性の出生率が2.1と高い理由の一端が見えた。「理解のある夫が家事育児をしているから」という私の楽観的な予想を裏切る話で非常に面白い。


あなたの育った街をぜひ見てみたいと言うと、彼女はその場で母親に連絡を取ってくれた。ここで書けなかったが彼女が教えてくれた詳細な数値は公務員である母親から聞いた内部情報だそうだ。


さらに彼女は育った街の人口分布を地図にして描いてくれる。薬の密売人や売春婦がいる地域。南米系移民の経営する店が軒を連ねる地域。彼女の住む家は低所得層の家族が住む地域にあるそうだ。本当に危険なマフィアが住む地域は別のところにある。丘を上がるとプチブルの住む地域。地元の大学で働く人が住んでいる。「ここの人たちは自分たちをアッパーミドルだと思いたがっているけれど、実際は貧しい。ローンを返すので精一杯」とのこと。この地域に住む有色人種はわずか3家族。さらに丘を上がると、もっとお金持ちが住む地域が出現する。ここには専門職・管理職の家族たちが住んでいるそうだ。


私が今住んでいるAnn Arborには高学歴でリベラルな人ばかりが住んでいる。外国人にも概して親切だ。ここでは安心して暮らせるが、これをもってアメリカであるとは言えないだろう。以前からお金持ちでも高学歴でもない人が住む街について知りたいと思っていたのが、意外なきっかけで実現しそうだ。