Higher Groundという会社が扱うフェアトレードコーヒーを買った。


設立者のクリス・トレターさんは、先月、メキシコのゼミにゲストスピーカーとして来てくれた。普通のコーヒーとフェアトレードとの違いは次の3点だ。


1)最低価格保証
1ポンド(約453g)につき1.26ドル払う。有機栽培の場合は1.41ドル。

2)上乗せ価格
通常、コーヒー豆の価格はC Priceと呼ばれ、C-marketと呼ばれる市場で決まる。C Price>$1.26/pound の時、フェアトレード業者は1ポンド(約453g)につき、5セント余分に払う。

3)先払い
生産者に契約価格の60%まで先払いする。


私は最初、この価格コントロールには懐疑的だった。日本政府の農業保護政策を思い出したためだ。「市場競争力がない製品は作るのをやめるべき。高い製品を買わされたら消費者は迷惑だ」と感じたが、話を聞いたり資料を読むうちに思い直した。


資料は中米のコーヒー農家の実態に焦点を当てていた。驚くのは生産者の貧しさ。収入は1日わずか$3で水道、電気、医療、充分な食事もない。国際コーヒー機関(International Coffee Organization: ICO)が価格統制をやめた1989年以降、コーヒーの価格は下がり続けている。長年、100ポンドにつき120〜140ドルだったのが今は50ドル。


食い詰めた農民は国境を越えて米国に出稼ぎに来ている。2001年5月にアリゾナの砂漠で死亡したメキシコ人も、元はコーヒー生産者だったそうだ。メキシコの時給は4ドル。米国なら1時間に4〜5ドルは稼げる。危険をおかしても米国に来る動機は充分にある。


圧倒的な貧富の差を知れば「自由価格が値下げにつながり、消費者に利益をもたらす」という教科書的な発想は消える。私はといえば金持ちでこそないが、この程度の余分な出費は何ともない。そういうわけで、写真の「カフェ・ザパティスタ」を1ポンド買ってみた。価格は11.75ドル。5ドル分は生産地のメキシコ・チアパスの学校への寄付となる。同封されたカードには生産者の写真と共に"Coffee for the people by the people of the people"と書いてあった。


ちなみに米国のコーヒー市場でフェアトレードのシェアは、現在5%だそうだ。