生産者を搾取せずにモノを作ったところで、本当に売れるのか。コストが高くつくだけではないか?


フェアトレードを批判する人はこんな風に考えるだろう。「理念は分かった。ところでビジネスにはなるの? 理想ばかり高くても売れないんじゃ持続可能じゃないでしょう」。


こうした疑問に答えるため、米国の研究者グループが行った実験がある。平均的な収入の人が住むデトロイト郊外のデパートの靴下売り場で、普通の靴下より高い値付けをしたフェアトレードの靴下を売り、いくらまでなら余計に払うかを調査した。リベラルでも高学歴でもない、値段に敏感な消費者が労働者の権利を守るために財布の紐を緩めるのか。答えはイエスだった。


この実験についてまとめた論文の和訳が、フェアトレードリソースセンターに掲載された。トップページの「論文・レポートなど」の「良心を持ち合わせた消費者はより高く払うだろうか」をクリックするとPDFで読むことができる。原題は"Consumers with a Conscience: Will They Pay More?" で、ContextというジャーナルのVol.5, Issue 1, pp.24-29に掲載された。


研究チームの1人は、私が今、聴講しているクラスを教えているイアン・ロビンソン教授。昨年秋に読んだこの論文がとても面白かったので、知り合いのKさんに知らせたところ、彼が運営するフェアトレードリソースセンターのウェブサイトに和訳を掲載することにした。ボランティアの方が訳されたそうだが、とても丁寧で読みやすい。フェアトレードに関心がある人、その実効性を確かめたい人、生産拠点の労働環境を改善したい人、CSRの観点から生産拠点の査察を行っている人が読むと仕事に使えると思う。


今日はロビンソン教授のクラスの初回で、16世紀にメキシコに来たスペイン人が原住民に行った残虐な行為についてディスカッションをした。スペイン人は中南米各地で10数年に100万人単位のインディオを殺しており、にわかには信じがたい数と残虐ぶりである。ラス・カサスの「インディアスの破壊に関する簡潔な報告」の一部や、スペイン王室とカソリック教会の関係について予習として参考文献を読んでおき、感想や疑問を話し合う。


高校の世界史で習ったことが意外に役立った。「日本にも同時期にイエズス会の人たちが布教に来たけれど、こんな虐殺な行為はしていない」と言ったらクラスメートは意外そうにしていた。