土曜日にミシガン大学の卒業式を見た。


印象に残ったのは規模の大きさ、障害者への配慮、そして愛国心的なものの受容。会場となったフットボール場には、卒業生の家族など6万人以上が集まった。車椅子の来賓数十人は、式の様子が見えやすい特設スペースに。スピーチは大画面のモニター2つに映し出されている。モニターに字幕が出るのは耳が不自由な人への配慮だが、英語ノンネイティブにもありがたい。会場の向かって右手では、軍服の卒業生数名が国旗掲揚の儀式を行う。式の最初には音楽学部の教授が国家を歌い上げ、参加者は全員起立した。


こうした場で"国家"に敬意を示すアメリカ人を見ると、新鮮な驚きを感じる。ミシガン大学は政治的にリベラルだが、ここではリベラルと愛国心はごく自然に両立している。もし、日本の大学で卒業式に自衛隊の制服を着た学生が出席し、国旗掲揚をしたら大騒ぎになるだろう。


こちらでは卒業式だけでなく、大学主催のコンサートに際し国歌を演奏することも多い。キャンパスの中心部にある広場では常にアメリカ国旗がはためいている。政治、経済、社会問題についてキャンパス内の人と話すと、日本のリベラル知識人とほぼ意見が同じだ。でも国家への正しい接し方は大きく違う。


卒業式の最大の見どころは、クリントン元大統領がゲストスピーカーを務めたこと(写真)だった。テーマは"Citizenship"について。投票と納税だけでは市民の義務を果たしたことにならないから、ひとりひとりが地域や国家、世界のために出来ることをしよう、と話した。個人の力を信じて前向きに生きよというアメリカでよく聞く主張だが、さすがに上手なスピーチだった。


クリントンといえば大統領候補のヒラリーを思い起こす。会場上空で反ヒラリー派がPRをしていた。"Choose Life, Not Hilary and Abortion(ヒラリーと人工妊娠中絶でなく命を選べ)"と書いた長い旗をなびかせながら飛び回っている。とにかく機会を見つけては自己主張するところがアメリカらしい。