旅先で話しかけてくるのは、善意の人ばかりではない。


高い土産物を売りつけたり、「ぼったくり料金」を提示する人が多いのも事実。10年前に行ったエジプトでは、一歩外に出れば「あれを買え」「これを買え」攻撃に遭って疲労困憊。今回もそういうことがあるだろう、と半ば諦めていたのだが・・・チュニスにはぼったくり系の人はほとんどいなかった。


初日に地図も持たずに外出し「レストランがありそうなところ」と曖昧な希望を伝えた時のこと。ちゃんと一番近いマーケットに連れて行ってくれた上、数十円のお釣りをきっちり返そうとするのに感激。その後も観光客向けの一部土産物屋を除いては、不愉快な思いをすることはなかった。


現地の人ばかりが集まるバー(ノンアルコールのビールを出す)に行ったら、ウェイターのおじさんがおつまみ用の豆の皮のむき方を丁寧に教えてくれたり、これまた現地向けカフェ(雀荘のような雰囲気)でトランプをしているおじさんの様子を見ていたら「ここに座っていいよ」と椅子を持ってきて、遊び方を教えてくれたり。皆、旅行者にとても親切なのだった。


もうひとつ気づいたのは、労働モラルが高いこと。お昼に頼んだコーヒーを半分飲んでしばらく喋っていたら、ウェイターがやってきて「冷めてしまったようなので、新しいのを持ってきます」といれかえてくれた。サンドイッチ屋では料理を運んでくる途中、付け合せのポテトが2本くらい下に落ちたのをちゃんと拾って捨てた上に、厨房に戻って落ちた分を追加してくれた。こういうことは、日本で質の高い接客サービスを受けていると、当たり前だが、アメリカで接客のひどさを体験した後では、かなり驚く。


モラルといえば、電車の中(写真)。高齢者はもちろん、自分より年齢が上とおぼしき人に、若者や子供が進んで席を譲る。私でさえ、小学生くらいの男の子に席を譲られそうになり「大丈夫、大丈夫。元気だから」と恐縮したほど。親の教育がしっかりしているのか、イスラム教徒だからか国民性か、理由は分からないがとても感心した。