育児のため、仕事を辞めた女性向けの再就職指南書。


著者のキャロル・フィッシュマン・コーエンさんは、ハーバード・ビジネススクールを卒業後、投資銀行勤めを経て、4人の子供をもうける。6年間の専業主婦生活の後、再就職の難しさを身をもって経験した。今は女性向けの再就職コンサルタントとして働いている。


主婦になった当初は育児やボランティア活動にいそしんでいた女性達が、何らかの理由で再び働きたくなったら、どうしたらいいか。豊富な事例と共にアドバイスを記している。


長年、仕事から離れていた女性にとって、自信喪失が一番の壁になるという。これを克服するために、大学の社会人向け講座を受講したり、ビジネス紙を購読して外の世界とつながりを持つことを勧めている。職探しについては、求人広告より前の職場の同僚や上司、大学の同窓会など人脈活用が有効だと説く。


興味深いのは、個人的な交渉を重視すること。小企業に自ら売り込みに行った場合、約半数の人が何らかの仕事を得ている(p.104)とか、就職面接でパートタイム勤務は認めないと言われたものの、知人を通じてその企業の経営者に話してもらったら簡単にOKが出た(p.119)、といったエピソードが次々に出てくる。コネを作ることも実力のうちなのだと分かる。


印象的なのは、女性初の最高裁判事となった、サンドラ・デイ・オコナーの話(p.177)。彼女は1952年にスタンフォードロースクールを3位の成績で卒業した。それでも当時、女性を雇ってくれる法律事務所はなく、5年間、主婦生活を経験している。たとえお金はもらえなくても法律の仕事をしたいと考え、ボランティアで司法試験の問題作成をしているうちに地元で名前が売れ、アリゾナ州の司法長官事務所で職を得る。実力を認められた後に、パートタイム勤務を勝ち取った。


アメリカでも「女だから職がない」時代があったことに、あらためて驚く。同時に優秀な女性が多いことにも感心した。ビジネススクールロースクールなど専門大学院の入学者の半数近くをすでに女性が占めている。多くの大学が、卒業生の再就職支援プログラムを設けている。日本の大学にも、こういう取り組みをしてもらいたい。


少し前に買ってあり、ちょうど読もうとしていた矢先に、偶然、米大使館のアレンジで、コーエンさんのインタビューができることになった。21日には彼女がパネリストとして登壇するシンポジウムが米国大使館と日本女子大の主催で開かれる。