NPOファザリング・ジャパン主催のシンポジウムでお話させていただきました。テーマは「夫の育児休業について、妻の視点から」。


この秋に第二子出産予定で、今回は夫も1カ月育休を取ることになりました。実家の親もまだ働いているため、我が家の育児は基本的に夫婦で回しています。上の子の育児&家事を考えると産後はシッターさんを頼んだ上で夫のフル参加がないときついという事情に加え、夫が育休を取るのは大学教員として学生さんにお手本を見せなきゃね、というのが大きな理由です。


夫がその辺りを詳しく話した後、私は妻の就業継続と夫の家事育児参加について話しました。繰り返し書いていますが、出産後、女性が「ある程度責任のある仕事」を続けようと思ったら、祖父母のフルサポートか夫の参加が不可欠です。私の仕事はかなりフレキシブルで、「お付き合い残業」は皆無ですが、それでも〆切時期は終電帰りになることが少なくありません。シッターさんや家事サービスも使い、最新家電を駆使してもなお、家の中には色々とやることがあるので、夫が「お手伝い」程度しかしない場合は、続けるのがきつくなります。


とはいえ、働く父親に対する職場の理解はまだまだ、まだまだ足りないです。男性の育休取得率はわずか1%台。これは日本企業における部長〜役員クラスの女性割合と同じくらい少ない。育休男性たちのマイノリティー度合いは、私のような単なる「働く母」以上にきついものがあります。だからこそ、彼らの行動は静かな革命だと思うので、ぜひ頑張って欲しいとお話しました。


今の日本はまがりなりにも先進国であり民主主義国です。そういう社会においては、強力なヒーローが表れて、twitterだのFacebookで「なんとか広場に集まれ!」と呼びかけて革命が始まることはありません。今の日本社会で「権力者」とは、独裁的な政治指導者のことではなく、普通に保守的な「上司たち」です。だから、日本社会を変えるのは、革命の旗を翻して国会前に集まるような派手な行動ではなく、上司に嫌な顔をされても腹に力を入れて「家族旅行なので有給取ります」とか「子どもが生まれるので育休を取ります」と言えるようなビジネスマンたちの勇気だと私は思います。


女性が働きやすい国にするため「保育所を増やせ」と言うことは、誰にでもできます。「国の育児支援が不足している」と厚生労働省を責めるのも実に簡単です。ただ、顔のない権力者に向かって石を投げ続けても何も変わりません。大事なのは、目の前の上司のご機嫌より、自分を必要としている家族の方を優先するような勇気を持っているかどうか、ということなのです。これは、妻が就業していようがいまいが関係ありません。


平日昼間にも関わらず、たくさんの方が集まって下さり、パネルディスカッションも本音満載でとても楽しかったです(私は半休を取って参加しました)。何より集まった多くの男性たちが少数派であることを恐れず、上司の機嫌を損ねるかもしれないことを恐れず、多少の経済的な損失を恐れず、難しいテーマに笑顔で取り組んでいることに本当にものすごく励まされました。日本の未来を作るのは、財界人の「机上の格言」ではなく、こういう男性たちの勇気に他なりません。


パパの育児休業や「隠れ育休」の実態については、FJのウェブサイトに載っていますので、ぜひご一読ください。