共働き子育て5年目。これまで色んなことがあった中で、良い意味で予想外だったのは保育園が素晴らしかったことです。


保育園は親が働いている間「子どもを預かってくれる場所」と思っている人が多いでしょう。実際、私も保育園のおかげで仕事を続けているのですが、子どもが成長するにつれて、保育園の真の力は、ちがうところにある、と感じます。


それは教育です。うちの子ども達を見ていると、保育園には高い教育機能があると実感します。例えばあいさつ。朝夕、担任の先生や園長先生に「おはようございます」「ありがとうございました」「さようなら」と親子そろって大きな声であいさつするので、1歳を過ぎた頃から周りをまねて会釈するようになります。


何より素晴らしいのは、高い自己肯定感が養われること。先生方がとにかく褒めてくれ、子どもの得意分野を伸ばしてくれるので、多くの子が自信をつけていきます。


「褒めて存在を認める」のは、0歳児クラスから始まっています。ある時、皆がひとりずつ、自分の帽子をかぶって見せると、先生方がひとりずつ「かわいい〜!」と褒めている場面に出くわしました。誰もがみんな可愛くて、そこにいる価値がある。親と同じ温度で子どもを全肯定する先生方の言動の積み重ねで、赤ちゃんの頃から自己肯定感が養われるのです。


集団生活ですが、ひとりひとりに配慮した対応がなされています。息子が2歳の頃、好きな「夏のしりとり歌」を一緒に歌いながら登園し、その歌の絵を描いてくれた担任の先生と話をしました。夏の間、絵は壁に貼ってありましたが、すでに秋だったので押し入れにしまってありました。


「うちの子この歌の絵が好きだったんです」と話すと、先生はその場で絵を出してくれて「○○ちゃんが好きだからね〜」と言って、また壁に貼り直してくれたのです。まだ20代の若い先生でしたが、ベテラン並みに子どもの心に沿った対応がありがたかったです。


これらはほんの一例です。「僕は/私は可愛い。ここにいてもいい」。そう確信できると、子ども達は伸び伸びと自己表現を始めます。息子が3歳の時、旅行である地方都市を訪れました。駅前でギターを弾いたり歌を歌っている大学生のお兄さん・お姉さんがいたので、様子を見ていると、息子が近づいていって踊り始めました。


私も夫も少し驚いて見ていたのですが、この時だけでなく、都内の公園やお寺や神社で、音楽が聞こえたら自然に踊る息子を見ていて、いつも受け入れられ、褒められると、人は自分がやりたいことを「恥ずかしい」と思うことなく素直に表現できるのだなと感じました。


得意なことを伸ばそうという方針は、行事にも表れます。例えばある年の運動会。幼児クラスでは各人の得意なこと(走ったり、なわとびをしたり)を披露して拍手を浴びていました。集団生活をしながらも、皆、一斉に同じことをするだけでなく、その子ができること/得意なことをする機会があるので、自信がつくのです。


室内でも子どもの興味をそそる活動が色々用意されています。紙芝居や絵本を読んでもらったり、折り紙が得意な先生に教えてもらったり。特に教えたわけではないのに、4歳の息子がすでに本を読めるのは、家庭での読み聞かせに加え、保育園での体験も影響していると思います。


実は以前、お受験塾が開催するお教室の説明会を聞いたことがあります。確かに建物はきれいですが、プログラムはほぼ全て、通っている保育園でやっていただいている内容でした。ピアノと英会話は習いませんが、それだけなら必要に応じて習い事をすればいいなあと思い、あらためて保育園のプログラムの質が高いことを感じました。


うちの子ども達が通っているのは色々な意味で「良い保育園」だと思います。こういう保育園の教育機能が広く知られるようになり、今の質を維持したまま、もっともっと保育園の数が増え、親の就業形態に関わらず、0歳以上の希望者みんなが利用できるようになって欲しいと切に願います。


そうしたら、日本の子どもの自己肯定感は今より上がり、自己主張できるようになり、自信を持って自分の意見をいつでもどこでも発信できるようになるでしょう。


最近「グローバル人材に必要」と言われる要素の多くを、実は保育園が養ってくれています。本気で日本人をパワーアップし、国力を高めたいなら、高等教育の入学時期を云々するより、保育園の数を大幅に増やすべきだと思っています。