クラスメートの中に女性の研究者がいる。

出会って最初の頃、自己紹介かたがたアメリカでこれから何をするのかお互いに話をした。そこで彼女の研究テーマを聞いて、そういう問題が世の中にあると初めて知った・・・というくらい、専門性の高い仕事をしている。私には未知の分野なので興味深く、折に触れて少しずつ何が問題でこれからどうすべきなのかを教えてもらっているうちに、それはとても大事なことだし、そういうことにはぜひ、お金を使うべきだと思うようになった。

彼女が自分自身の地位や名声に全く関心がないように見えることが、説得力の背景にあるように感じる。このプロジェクトを成功させたら、次のキャリアにどう生かそうか・・・と普通なら考えるところだけれど、彼女にはそういうところが全然ない。人前に出ることも政治的に動くこともやりたくないと言う。

私自身の言動は極めて単純な欲求に基づいている。好きな人には面白がってもらい、嫌いな人は黙らせたい、というものだ。ほとんど子供と変わらない。

だから、彼女のように無私無欲で、目的のために力を注いでいる人を見ると心が洗われる。こういう人に権力とお金を握ってほしいけれど、彼女はきっとどちらもいらないのだろう。

昨日はアーミッシュの村に行ったのでそのことを書こうと思ったのだけれど、行きのクルマの中で彼女の話を聞いていたら、こちらの方が心に残ってしまった。人の心を動かすのはテクニックじゃないな、とつくづく思う。こういう人と知り合えたことは、アメリカに来てよかったことのひとつだ。