昨日私が参加したホームレス向けのボランティアは、公共サービス提供の仕組みとしてとても良いと感じた。

全てを政府が手がけるとコストがかかりすぎるし非効率を生む。サービス提供のノウハウを持つNGOがマネジメントを手がけ、個人は余暇をちょっと割けば低コストで質の高いサービスを提供できる。私たちを誘ってくれたインターナショナルセンターのロジャーは「政府とNGOと個人のコラボレーションで成り立っている」と話してくれた。誰にでも何か良いことをしたいという欲求があるから、こういう形で協力できるのは嬉しい。

同じように感じる人は多いようで、ロジャーによると月に延べ300〜400人がボランティアとして働いており、今回もミシガン大学の学生や研究者向けに呼びかけたら、8人の枠に30人近くが申し込んできたという。先着順でボランティアの受け入れをしたそうで、私が参加できたのはラッキーだった。

キッチンと宿泊施設を含むこの建物全体を31人のフルタイムと9人のパートタイムのスタッフが運営している。ボランティアの参加は年間19,000時間に上り、そのおかげでフルタイム9人分の人件費に相当する275,000ドル(3190万円)を節約できているそうだ。

NGOのマネジメント能力の高さやスムーズな協力体制にも感心した。私たちボランティアは最初に上記の基本事柄をまとめたファクトシートを手渡される。集合場所からキッチンまでの移動手段を提供する車のドライバーもボランティアだ。仕事を終えて帰る時刻になると、行きとは違う老婦人が迎えに来てくれた。

その後、教会系の寮のリビングルームでピザとサンドイッチとすいかを食べながら今日の感想を小一時間話し合った。こういう場になるとつい、仕事のくせが出て色々質問してしまう。「あのホームレス向けシェルターには誰がどんな寄付をしているのか」とロジャーに聞いたら「大口の寄付は特にない。ただ、大学街ならではの協力体制がある。ミシガン大学看護学部は2人スタッフを派遣している上、寄付もしている。ソーシャル・ワーク学部も協力している」との答え。学生にとっては実務経験を積む良い機会なので双方にメリットがある。

東京でもいくつかのNGOでボランティアをしたが、恒常的に人手不足に悩んでいた。スタッフが仕事の割り振りを上手く出来ずに困っている例もよく見た。「NGOの能力開発をしなくてはいけない」という話をよく聞いた。確かにNGOが人とお金を上手くマネジメントできれば、効率的で効果的なプロジェクトが可能になるだろう。

ところでロジャーによるとミシガン州は伝統的にホームレスに寛大な土地柄で、シェルターに滞在できる期間が長くサービス拠点が多かったという。「知事が民主党だから?」と尋ねてみたらそうではなかった。GMなど自動車や家電など製造業の拠点があったため、住民の所得が全米でも高い方だったそうだ。一方、ブッシュ現大統領がかつて知事を務めていたテキサス州や南部のミシシッピ州はホームレスに対する処遇が最低限だと聞いて「やっぱりなー」と思ってしまった。

写真はホームレス向けシェルターの中にあるレストラン。夕食の片づけが終わったところ。