今日はミズーリ州カンザスシティで開かれた"At-home Dads Convention (専業パパの会議)"に参加。

私の留学目的は「アメリカ男性の家事育児参加とそれが妻のキャリアに与える影響」を調べること。全米から自宅で子供の世話をするお父さんたちが集まると知って、すぐに申し込みをした。

参加者は約60人。彼らの前職はシリコンバレーのIT企業や弁護士などホワイトカラーで、妻は管理職や専門職、公務員といった組み合わせが大半を占めていた。アッパーミドルクラスのカップルが子育てや育児をどう分担しているか、生きた事例を見ることができて非常に勉強になった。

なぜ"Stay-at-home-Dad" になったのか--。参加者に片端から尋ねてみたところ、大きな理由が2つ分かった。ひとつめは自分の子供は自分の手で育てたいから。保育所やベビーシッターなど他人に預けることに抵抗感を示す人が多かった。ふたつめは経済的な理由。妻の方が高収入だったり、夫がレイオフされたという話を何度も耳にした。育児分担は平等にすべき、という「先進的な男性」の回答を予想していたが見事に外れたのが面白かった。「べきだ論」より「どうしたいか」の方が強く働くのだ。

日本で取材をしていると、インタビュー対象の気持ちを聞き出すのに一工夫いる。「どう思いますか」と正面から尋ねても表面的な答えしか返ってこないことも多い。取材経験を積むうちに「なぜ」とストレートに聞くのは手抜きだとさえ思うようになっていた。

もしこの会議が日本で開かれていたなら、質問の際は言葉遣いに細心の注意が必要だったろう。英語でそんなことは無理と思っていたが、参加者に話を聞くのは意外に易しかった。「なぜですか」「いつからですか」と短く尋ねるだけで、ストーリー性のある答えが返ってきたからだ。テーマによるとは思うが、今回の取材は日本よりやりやすかった。

申し込みをする時は不安もあった。子持ち男性が集まる会合にあやしい英語を話す外国人の女が現れたら嫌がられるのでは、と思ったからだ。

これは全くの杞憂に終わった。昨夜開かれた飲み会や打ち上げを兼ねた夕食などを含めて20数人と話して連絡先を交換することができた。皆、極めて友好的でオープンに自分の経験や考えを話してくれたので、研究に有益だっただけでなく、楽しい集まりだったと思う。

主催者であるカンザスシティのStay-at-home-Dadのアンディさんの仕切りが非常に上手く、レストランや会議場への移動がスムーズだったおかげで、移動中にも色々な人と話ができた。後で聞いたらアンディさんは旅行業界で働いていたことがあると言う。道理でアレンジが完璧なわけである。

会場には私の他にも3人の女性が来ていた。カリフォルニアから来た学校教師(夫が会議の実行委員)、Stay-at-home-Dadについて研究するトルコ出身の大学院生、フリーのジャーナリストだ。彼女たちと話をするのも興味深く、本当に来てよかったと思った。