子育てしていると、面白いことがたくさんありますが、これは格別でした。


うちは男女共同参画な夫婦で、19年前に付き合い始めた時から「男/女はこうすべき」という規範がきらいでした。「デートの時は男がおごるべき」という発想がいやだったので、食事は割り勘。たとえ夫がまとめて払う(そして後で清算する)時でも、私にお財布を預けて会計させるほど。友人を家に招いた時は、いつも以上にはりきって台所に立つのは夫の役目。「少しは座って食べた方がお客さんも落ち着くよ」と何度か言わないと彼は座りません。これも「嫁がひとりで奮闘して夫の客をもてなす」構図がきらいなためです。


育児についても同様で、例えば食事の最中に、子どものオムツ換えが必要になった場合。私が食事を作った時は、ほぼ100%、夫が食事を中断してオムツ換えをします。「子ども泣く」→「みんな気づく」→「夫立つ…」。


そのため、性別役割分担やジェンダー規範のおかしさについて、夫婦で話をすることがよくあります。食卓の席でもよくそんな話をしていたところ…。


その夜は私の仕事復帰に備えて、夫が夕食を作りました。おかず3品がとても美味しかったので「おれが本気出せばこんな感じだよ〜」と得意気な夫。先に3歳の息子が食べ終わり「ごちそうさまでした」と席を離れました。続いて私も食べ終わり、退屈してぐずり始めた0歳娘を抱っこ。ご飯をお代わりした夫だけ食事が終わっていない、そういう状況での出来事です。


歩いていた息子が壁に頭をぶつけました。
「ごつん!」と大きな音がして泣きそうになる息子。
私が冷凍庫から保冷剤を取り出し息子に渡す。
息子、いすに座って頭を冷やすけれど痛そうにうなっています。
私、いったん娘をおいて息子を抱っこしながら右手で頭を冷やしてあげる。
私、左手で娘に玩具を渡す……とその時、3歳児いわく


「おんながおとこをだっこしてあたまをひやしながら、もういっぽうのてであかちゃんをあやして、そのあいだに、おとこがのんびりゆうしょくをたべている…みたいなかんじ」


夫と顔を見合わせて大笑いしました。3歳児でありながら、このきわめて性別役割分担的な一瞬の光景の意味を理解したのです。


「女(=私)が男(=息子)を抱っこして頭を冷やしながら、もう一方の手で赤ちゃんをあやして、その間に男(=夫)がのんびり夕食を食べている…みたいな感じ」


家庭内で妻が無償労働に徹して夫がそれを当たり前のように享受している構図だよね、これ。ということに。


こういうことに、大人になっても気づかない人がたくさんいるんだよ、よく気づいたね。すごいねえ…。ひとしきり息子を褒めた後、パパは美味しい夕食を作って、あなたに食べさせてくれたんだから、今は自分が食べる番なんだよね。ずるくはないんだよ、と説明したのでした。