女性活躍やワーク・ライフ・バランスを考える人は、ぜひ読んで欲しいです。筆者はアメリカの大学教授ですが、日本で今、議論されている問題をより深く考え、説得力ある提案ができるようになります。


Unfinished Business: Women Men Work Family

Unfinished Business: Women Men Work Family


タイトルの”Unfinished Business”は「終わっていない仕事」、「未完の仕事」という意味です。アメリカの女性解放運動が、主に白人女性の経済・社会分野への進出を促したものの、有色人種女性の犠牲の上に成り立っていた(95ページ)という問題意識が本書の根底にあります。


アメリカ女性は出生率が2.1前後と高く、管理職など指導的な地位に占める割合は約50%で高いです。ただし、政府の育児支援は貧弱で、市場任せになっています。子持ち女性が社会進出するために、非白人女性が、子どもや高齢者のケアを低賃金で担っている、という構造があります。


ケア労働の対価が低いのは、ケアを過小評価する社会規範が背景にあり、これを変えない限り、本当の女性解放や男女平等はできない…。繰り返し、このように主張するので、硬派フェミニスト向け? と思われそうですが、経済界からも高い評価を受けています。本書はワシントン・ポストやNPRといったリベラルなメディアだけでなく、Financial Timesとマッキンゼーの「ベストビジネス書」に選ばれているのです。つまり、経済政策として始まった日本の女性政策の文脈にも合致する視点で書かれています。豊富なエピソード、事例、研究データを踏まえ、感情的にも納得のいく、分かりやすい展開が特徴。


本の著者は、名門プリンストン大学の教授で専門は国際法、国際政治。夫も同じ大学の教授で、息子さんが2人います。なぜ、こういうテーマの本を書いたのでしょうか。