米国のサービス業界で働く人の生活は厳しい。


昨日はホテル、レストラン業界で働く人の労働組合UNITE HEREの職員採用担当者マルコス・エスコバールさんに話を聞いた。組合員数45万人。これはホテル業界で働く人の8〜10%に相当するそうだ。


南米系移民の人が多い。仕事はきつく、収入は低い。時給は地域ごとの最低賃金であることがほとんど。健康保険はなく、病気になったらあっさりクビにされる。こうした労働者の中には社会保障番号を2つ持っている人もいる。これは本来は違法だが、雇用者はさらにこの状態を悪用して週に80時間も働かせることがある。1日8時間、週40時間以上働けば当然、払うべき残業代を"節約"するため、あたかも2人雇っているかのように見せかけるのだ。


日本でもここ数年、サービス業に従事する非正規労働者の置かれた状況が問題になりつつある。長時間労働をしても1人が食べていくのがやっとという給与水準。昇給や昇進など正社員なら持てる安定や将来展望が持てないことが、若年層に不安をもたらしている。


米国の移民労働者の実態は、日本の希望なき非正規労働者の姿と重なっているように思えた。経済問題が社会問題化したら、日本なら政治に期待する。「今度の大統領選挙でこういうテーマは焦点になりそうか」と尋ねると、マルコスさんは「議論してほしいが、ならないと思う」と悲観的だった。


歴史的に民主党は製造業労働者の味方であった。でも、サービス業に従事するのは米国白人男性工場労働者とは違う層である。「民主党も結局は金持ち経営者の味方なんだよ」と冷めている。


左がかった人でも政府に期待しないところは、日本とは違うように感じた。彼に言わせれば「労組の組織率を上げて、世論に与える影響を大きくする。政治家に僕たちの主張を聞いてもらうには、こちらが交渉力をつけるしかない」。資本家の横暴に対抗するにしても戦い方は市場主義的なのが面白い。


ちなみに、ホテル業界の労組組織率が85%に達しているサンフランシスコでは、時給が16ドル(約1920円)とかなり良い。大都市で物価が高いこともあるが、高い組織率が交渉力につながるという考えはこうしたところから来ている。


交渉相手はヒルトンやマリオットなどの大ホテルチェーン。ヒルトン姉妹がバカげた額を消費しているその裏に、食うや食わずの労働者がいるのである。こういうのは私には革命前夜のフランスと同じに見える。