今日は"Working Mother"誌を発行する会社のCEO、キャロル・エヴァンズさん(写真)の講演を聞いた。


ちょうど4ヶ月前にキャロルさんの著書『THIS IS HOW WE DO IT』を読んでとても面白かったので、楽しみにしていた。予想通りエネルギッシュで明るい人だった。本を書いたきっかけは、CNBCに出演した際に受けた質問だという。2001年9月、現在CEOを務める会社を自分で買収した。その直後に出演依頼を受けたそうだ。彼女がキャスターから聞かれたのは「母親が働くのはいいことなんでしょうか」。


2児の母であり、広告営業で目覚しい成果を収め、企業経営もしている自分に今さらそんなことを聞くなんて・・・と驚いたそうだ。そこで、米国ではすでにワーキングマザーが多数派であること、様々な工夫や苦闘を重ねながら、仕事と家庭を両立している様を紹介するために本を書いたのだ、と。


米国でいまだにそういう質問が出ることに私も少し驚いた。子供に充分な時間を割くことができないため、ワーキングマザーは常に罪悪感を抱いているとキャロルさんは言う。"Working Mother"誌で最もヒットした企画のひとつは「罪悪感のオンパレード」に関するものだったらしい。キャロルさん自身も娘に「いつも家にいないくせに!」と言われたり、外せない出張と息子の誕生日が重なるなど、数え切れないほど罪悪感を覚えてきたと話す。この辺の感覚は日本のワーキングマザーも共有するのではないか。


質儀応答の際に、米国の公的育児支援についてどう考えるか聞いてみた。連邦レベルの支援が皆無に等しいこと、そんな中でも米国人たちは個人の努力や勤務先との個別交渉で"バランス"を実現している。米国よりはるかにましな公的育児支援制度を持つ日本から来てみると、とても興味深い実態だ。


キャロルさんの答えは「有給の産休・育休を期待しているがなかなか実現しない。一方、米国は政府より雇用主が率先して育児支援をしている。人材獲得競争のためだ。例えば最近、ある会計事務所が最近、有給の産休期間を延ばした。ライバルの持つ制度に合わせるためだ」。育児支援が福祉ではなく、企業戦略の一環になっていることをあらためて確認した。