ズライコさんからメールがきた。

フロリダ大学の女性学会議で知り合ったタジキスタン文化人類学者だ。2007年2月のことで、当時は彼女も私も、フルブライトアメリカに滞在していた。今、彼女は再びアメリカにいるそうだ。2人の子どもと一緒にワイオミング大学で研究中とのこと。


フロリダの青空を思い出した。厳寒のミシガンから飛行機で2時間。暖かさに心が和んだ。会議に招待してくれたリンダ・ルーカス教授のフランクな人柄もあって、とても良い思い出になっている。


今、ズライコさんは「タジキスタンにおけるイスラム教の普及〜女性の視点から」というテーマでアメリカ人女性研究者と共同研究をすすめている。研究資金を出しているのはソロス財団。「よくわからないけど、リスク」と捉えられがちなイスラム教を、女目線で分析する。そういう知的投資に、プライベートマネーがついてくるところがアメリカらしい。


「私は日本に戻って、子どもをうみました」と報告して写真を送ったら「かわいい! とうとう決心したのね! 私もちょっと、貢献できたかも!?」との返事。実際、私が子どもをもとうと思ったのはアメリカでたくさんのワーキングマザーを見たためであり、ズライコさんの影響も少なくない。彼女はフロリダの会議に、生後わずか2週間の娘を連れて出席していたのだ。


籠に入った赤ちゃんは、会議の間中、私たちと行動を共にした。食事の時も一緒。ルーカス教授は学生のベビーシッターを手配して、会場の外で子守りをさせた。授乳したり、子どもの様子を見ながら、ズライコ教授(本国の大学では文化人類学の学部長なのだ)は、研究発表を聞いていた。周囲の人がそれを自然に受け入れ、頻繁に様子を見ることができれば、こんなに小さい赤ちゃんがいても、仕事はできるんだなあと思った。


私が産休を比較的短くしたのは、アメリカでこういう人たちを間近に見たためだった。実際、職住近接でない東京のオフィス・住居事情では、あまり長時間働くことはできないのだが。


ひさびさの便りに、あの頃の「なんでもできそう」な気分を思い出し、晴れやかな気分になった。
こういう気分を誘うところに、アメリカのソフトパワーを強く感じる。