診察台に寝転ぶと、異変を察した子どもは、お兄さん歯医者さんの手を噛みそうなほど、嫌がる。夫と一緒に手を握ったり歌を歌ってあげてなだめ、何とか診察を終える。その後、保健師さんの説明を聞いた。
希望者は後日、フッ素を塗ってもらえること、歯ブラシの選び方、歯の磨き方を教えてもらった。
「磨く時、ものすごーく嫌がって毎回暴れるんですが、いい方法はないですか」とたずねると「こんなに協力的なお父さんがいれば大丈夫」との答え。ふと周囲を見ると、母親1人で子どもを連れてきている人がほとんどだった。ああそうか、夫が歯磨き手伝ってくれるから、大丈夫という意味かあ・・・。
たまたま今日、夫は「家で研究」の日だから一緒に来られたわけだが、会社員だったら難しいだろう。
「協力的だってー。褒められちゃったね」と喜んでみたものの、釈然としない。それは、育児する男は称賛されるが、稼ぐ女は褒められるどころか、むしろマイナス評価されることもあるからだ。
「奥さんがしっかり働いてるから、都心のマンションの家賃払えるんですね」なんてことを、私に言ってくれる人にこれまで出会ったことはない。
うちは賃貸だが、共働きだからこそ、都内で家が買える家庭は少なくないだろう。いかに高給業種だとしても、四捨五入したら1億円みたいな物件は、相続でもないかぎり、片働きで買うのはきつい。柱1本では倒れる家で、妻が2本目の柱を務めていることを、褒めてくれる人っているのだろうか。
男の育児は“協力程度”でも絶賛される。女の就労は“必要不可欠”でも無視されることが多い。これは一体何なのか。
「男性は外で働き、女性は家庭を守るべき」という考えに賛成ですか、反対ですか?
という質問では、性別役割分担規範の本音は分からない。