日中国際結婚を観察する文化人類学の本

  日本人男性と中国人女性が結婚紹介所を通じて知り合い、結婚していく流れを数年にわたり参与観察した研究。著者は文化人類学者の山浦ちぐささん。

 
 日本男性は40代後半から60代、中国女性は東北地方のある町に住む20代で、結婚後は女性が日本に移り住みます。多くの男性は中国語が分からないため、紹介所は通訳から始まり結婚後の諍いへの助言もしています。
 
 日本と中国の地理的な近さ、見た目の類似は「結婚できる」という判断につながっていき、言葉が通じないことやお互い数回しか会わずに決断することは、結婚の難しさにつながります。また、中国女性が日本入国の手続きをする際には「それは、本当の結婚なのか」という疑念にさらされます。
 
 本の題名にある通り、相手と「結婚できる」判断の境界線を様々な角度から描きます。例えば女性側が住む地域には「残留孤児」が多く、1980~90年代に日本へ帰国した人たちから、豊かな日本に関する良い印象に結びついたそうです。日本の植民地支配が予想外の形で影響を与えていました。
 
 通読して感じるのは、著者のフェアなものの見方です。結婚相手を探して奮闘する人々や仲介者の発言を的確に位置づけつつ、安易にジャッジしないところが、ともていいなあ、と思いました。