ストラスブールのプレスクラブで講演

 

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 夕方、ストラスブールのプレスクラブで講演しました。

 大崎麻子さんが日本の女性政策について概観、現状と課題をお話。私は日本のメディア業界が非常に男性中心であることを数字で示した上で、女性が少ない背景に、労働慣行の問題(長時間労働、全国転勤)と、労働規範(主流派と非主流派の扱うテーマ)を挙げ、変化の兆しについて、いくつか事例を示しました。

 ここでも活発に質問が出ました。「30年前、東大で研究をしていたけれど、言葉にできない違和感を覚えた。それが何かあなたたちの話を聞いて分かった」という女性や「日本語は男性と女性で言い回しがすごく違うと思う」という指摘などが印象に残りました。

 確かに空腹時、男性が「腹減った」と言い女性が「お腹空いたね」と言う光景をよく見ます。もし女性が「腹減った」と言ったら、一緒にいる人は驚くでしょう。

 大学でも「ことば」に関する質問が出ましたし、フランスの人は「言葉遣い」や「ジェンダーと名詞」の感覚が鋭いのかな、と思いました。

 とても楽しい時間でした。

欧州評議会事務次長と面談

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 バッタイニ=ドラゴーニ欧州評議会事務次長と面談し30分強お話しました。47カ国が加盟する評議会は多様で、西欧型の民主主義と異なる価値観を持つ国も当然、あります。

 ドラゴーニ事務次長とのお話では、ポピュリズムがもたらす誤解、偏見、バックラッシュの課題など、日本でも危機感をもって議論されていることが多かったです。類似のかつ難度の高い課題に取り組むドラゴーニさんの姿勢から、人権と民主主義、法の支配という価値を浸透させるために、たゆまぬ努力が必要であることをあらためて感じました。

 1月27日はアウシュビッツ=ビルケナウ強制収容所ソ連軍に解放された、ホロコースト記念日です。式典参加のため現地入りしていたドラゴーニ事務次長のお話を聞きながら、二度と再び悲惨な戦争を起こしてはいけない、という欧州各国の70年前の決意を想像しました。

 歴史的に、独仏が取り合いを続けてきたストラスブールという地に人権や民主主義を象徴する機関を置いた意義なども感じるひとときでした。

欧州評議会PACEサイドイベントで日本のジェンダー平等への取り組みと現状について講演

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  欧州評議会PACEサイドイベント。立ち写真中央から右へペトラ・ステーネン・蘭議員、ダニエレ・カンジェミ・人権及び男女平等局長、赤松武・在ストラスブール日本国総領事 欧州評議会常駐オブザーバー大使。

 大崎さん(写真左から2人目)が日本の女性活躍政策について、法律やWAW!、W20等の国際会議、国際文脈を踏まえた包括的な講演をした後、私は無償ケア労働の中でも育児について、男性育休等の事例からお話しました。

 小泉進次郎大臣の2週間育休について、ジェンダーギャップ指数ランキングトップの国アイスランドの議員が「短い」という反応をしていたことは、ひとつ象徴的なレッスンです。

 やはり反省すべきは彼が2週間「しか」休業できず、しかも「公務優先」と言わざるをえない状況を作った国会の空気、世論とメディアでしょう。

 また、ジェンダー平等を目指すのは当たり前のことであり、男性の無償ケア労働分担も当然である、という前提で議論が進む中に身を置くことで、日本の課題を私自身も言語化できました。

 ところでこのテーマ、日本のエリート男性にとっては、居心地がよくない話題かと思っていたら、ユーモアたっぷり赤松大使のコメントが素敵でした。真に挑戦的かつグローバルな環境でキャリアを開拓してきた人は、やっぱり違うな、と思います。

ストラスブール大学で日本の女性活躍政策やジェンダー平等の実状について講演

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 ストラスブール大学大崎麻子さんと一緒に講演。麻子さんが日本政府の女性政策について国際的な枠組みを踏まえ包括的にレクチャー。特徴、これまでに達成したこと、今後の課題をとても分かりやすくお話。

 その後、私は日本のジェンダー規範が変化してきたことをテレビCM等を見せつつお話しました。

 「24時間戦えますか」「亭主元気で留守がいい」の時代に小中学生だった私達は共に長時間労働で家族を支える父親と専業主婦の母親のもとで育ったこと、今では様変わりして、家事をしない男性を描くと批判されること。英国ではジェンダーステレオタイプを再生産するようなCMは禁じられており、実際にクリームチーズのCMが取り下げられたこと、日本の変化を象徴する良い例として「オロナイン」の赤ちゃんを洗う男性の映像を紹介しました。

 CM映像は非常に短くハイコンテクストですから、伝わるかな、と気がかりでしたが、日本語学科の学生さんは全部分かっていたようですし、タンスにゴンは"Good Husband is absent and healthy"としておいたら、スライド出した瞬間に笑い声が出ていました。

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質疑が大変盛り上がり予定時刻を40分超過して議論が続きました

 「日本のシングルマザーの置かれた状況は?」「結婚で重視されるのが、ロマンチックな関係ではなく社会役割なのではないか」「リーダーの世代が変わると、ジェンダー平等も進めやすくなる?」「男性名詞の職業を女性名詞化したら権威が下がってしまった、という議論がフランスではあるが日本はどうか?」等、よく考えられた質問がたくさん出て、時間を40分ほどオーバーしてお話が続きました。

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 セミナーを運営して下さったサンドラ・シャール先生は「女工哀史」の聞き取り研究を手掛け、日本のメディアにもよく目を通していらしゃいます。

人材企業経営者からエンジェル投資家になった日系インドネシア女性

 ジャカルタで取材した、エンジェル投資家の記事が出ました。日系人材企業インドネシア法人トップを務めていたマリコさん。ある事件を機にエグゼクティブの仕事と生活を捨てて、起業家支援に乗り出します。

 1件あたり4~5万ドル、計13件のベンチャー投資をしてきたマリコさんは「インドネシアのお母さんが笑顔になって未来を描ける事業」に絞っていると言います。詳しくは記事をご覧ください。

www.spf.org

酒向萌実さんとWoman Typeで対談しました

 女性と仕事についての取材をたくさん受けてきた中で、ダイレクトに「お金」や「稼ぐこと」を取り上げた企画は初めてかもしれません。

 社会問題解決のためのクラウドファンディングサービスを提供する企業で経営者を務める酒向さんは、日本に深く根付いている「女性は稼げなくて当然」という考えを変えたいし、女性も稼げるようになってほしい、と話します。私は酒向さんと20歳違うのですが、おっしゃることに200%賛成でした。

 対談記事の前編では、女性のロールモデルが少ない問題、特に男が何でも上でなくては、という規範などについて話し合いました。

woman-type.jp

 後編では、自分の市場価値を冷静に見積もり、欲しい金額を求める「交渉」の大切さについて話しています。

woman-type.jp

 私がジェンダー関連の仕事を始めるきっかけは11年前、このような本を書いたことでした。当時から、経済的自立が女性のエンパワーメントの根幹だと思っていたので、こういう風にお話ができてとても嬉しかったです。

www.keisoshobo.co.jp

 

 

長野県庁+県内企業向けジェンダー研修

 長野県庁の各職場で男女共同参画推進員を務める方々(管理職が多い)と、県内企業の希望者向けにジェンダーの研修をしました。

 特に「差別するつもりはないけれど」、暗黙のジェンダーバイアスが出てしまう事例を、漫画、CM、企業のTwitter投稿などを取り上げて解説、グループディスカッション。

 県庁は大きな組織のため職場によっては「これは男性の仕事」と思われていることもあり、そういうことが全然ない職場もありました。

 140人以上の参加があり、様々な意見、体験のシェアがあり面白かったです。