読書

Vogueウェブ版書評「ある奴隷少女に起こった出来事」

ダイバーシティやサステナビリティーをテーマに扱うVogueウェブ版のCHANGE欄に書評を書きました。 「ある奴隷少女に起こった出来事」は著者の体験をもとにした実話です。奴隷制度のもと「もの」として扱われた黒人女性奴隷が直面した性暴力に、主人公がいか…

Vogueウェブ版に書評。紗倉まな著「春、死なん」

Vogueの社会問題を扱うコーナーCHANGEにて書評を書きました。ダイバーシティ、ジェンダー、SDGsといった視点から読み解きます。 www.vogue.co.jp

朝鮮戦争時代の韓国知識人を描く小説「広場」

1950年前後の朝鮮半島を舞台に、生きがいや理想を求め苦悩する哲学専攻の大学生が主人公。高野悦子「二十歳の原点」や夏目漱石が好きな方に親和性あると思います。 南北両国が当時持っていた問題を簡潔に抽象度高く描いているのが見事です。南の権力は「反共…

12歳女の子の切れ味鋭い視線を通して描かれる半世紀前の韓国地方都市の生活

家族がいるリビングで開いても大丈夫。ママは品の良い小説を読んでいます…と判断して読み始めた初日から、こんなシーンに遭遇した。 12歳の女の子が、無邪気な男尊女卑発言をした同級生の男の子を汲み取り式トイレに落とす。自分では相手に一切ふれず、彼の…

私は全く分かっていなかった「独ソ戦」

読んでいる途中で愕然とすること、泣きそうになることがしばしばありました。 ヒトラーとナチスは絶対悪で、2700万人の犠牲を出しつつ食い止めたソ連は英雄…漠然とそんなイメージを持っていたのは、私もどこかで「大祖国戦争」のプロパガンダの影響を受けて…

書評『父親の科学』、共同通信の配信で地方紙に掲載

『父親の科学』はAP通信科学デスクだった著者が多くの研究から父親の役割、意義を示した興味深い本です 8月中旬、共同通信社に書き送った『父親の科学』書評が、月末から9月初旬にかけて、全国の地方新聞に掲載されました。 共同通信社文化部で担当下さった…

元米大統領夫人ミシェル・オバマ自伝の書評をYahoo!に書きました

世界で47カ国語に翻訳され、1000万部のベストセラーになっている、ミシェル・オバマ自伝"Becoming"、日本語版が出版されました。書評をYahoo!に書きました。 セレブが書いた本ですが、一般人の目線を失っていないところが、支持を集めた理由かなと思います。…

港区の男女平等参画情報誌に書評を書きました

全部で26冊、男女平等に関する本が紹介されています 港区の男女平等参画のための情報誌「オアシス」にお勧め本の紹介を書きました。 近年出版されたものを中心に5冊を取り上げています。 『アリーテ姫の冒険』復刻版『子どもがすくすく育つ幼稚園・保育園』…

日経DUAL連載を更新しました:ノーベル平和賞ナディア・ムラドさんの映画を見て息子と話す

日経DUAL連載を更新しました。 dual.nikkei.co.jp ナディアさんはイラク北部の村で家族や親戚と暮らしていました。貧しいけれど、頑張って農業をしたり、兄たちが働きに出るうち、新しい家を建てることもできるようになります。 そこへテロリストISIS達が襲…

日経DUALに、息子による「アリーテ姫のジェンダー分析」について書きました

賢く勇敢なお姫様を描きベストセラーになった英国の児童書「アリーテ姫の冒険」について書きました。 dual.nikkei.co.jp 家庭教師より賢く、悪い魔法使いより強くて勇敢。伝統的な「女らしさ」と正反対のアリーテ姫をジェンダーの視点で読んでみました。 読…

Yahoo!ニュース個人で「アリーテ姫の冒険」について書きました

news.yahoo.co.jp 記事タイトルにある通り、賢いお姫様の物語です。女性は無知で笑顔で相手の話に相槌をうっている方がいいとか、賢いと結婚できないといったような性差別の問題をおとぎ話の巧みな比喩で描きます。 『アリーテ姫の冒険』(大月書店)。原題…

下北沢の本屋さんB&Bでお話しました

下北沢の本屋さんB&Bで拙著に絡めた対談イベント。本が好きなので本屋さんのイベントはとても嬉しいです。 クリエイティブディレクターの髙田聡子さんをお迎えして、制作者の人材マネジメントと表現のダイバーシティについて、主に海外事例の最前線を伺いま…

プリンストン大学教授・アン・マリー・スローターさんの新刊”Unfinished Business”の書評続きです。日本社会への教訓がたくさん詰まっています。

Unfinished Business: Women Men Work Family作者: Anne-Marie Slaughter出版社/メーカー: Oneworld Publications発売日: 2015/10/01メディア: ハードカバーこの商品を含むブログを見る (前編)で書いたように、2児の母であるスローターさんが、自身の単身…

女性活躍やワーク・ライフ・バランスを考える人は、ぜひ読んで欲しいです。筆者はアメリカの大学教授ですが、日本で今、議論されている問題をより深く考え、説得力ある提案ができるようになります。

Unfinished Business: Women Men Work Family作者: Anne-Marie Slaughter出版社/メーカー: Oneworld Publications発売日: 2015/10/01メディア: ハードカバーこの商品を含むブログを見る タイトルの”Unfinished Business”は「終わっていない仕事」、「未完の…

文化人類学者が現代日本について学ぶ学生向けの教科書として書いた英語の本です。

Capturing Contemporary Japan: Differentiation and Uncertainty作者: Satsuki Kawano,Glenda S. Roberst,Susan Orpett Long出版社/メーカー: Univ of Hawaii Pr発売日: 2014/03/31メディア: ペーパーバックこの商品を含むブログを見る 今年始め、ハワイ大…

子ども可愛いし、仕事もがんばろう、と思える本です。

最近、ママLOVEいちじるしく、トイレまでついてくる上、夫が寝かしつけようとしても「ママ…一緒に寝よう」「どうしてお仕事するの?」と言う、もうすぐ3歳の娘。そう言われると、もういいか、一緒に寝ちゃうか…と思って布団に入り、寝顔やっぱり可愛いなーと…

マララさんの自伝を読みました。

マララさんは女性にも教育を受ける権利を、と訴えてタリバンに顔を撃たれたパキスタンの少女で、史上最年少のノーベル平和賞候補者になりました。…といったことは、多くの人が知っている通りです。 この本で私がいちばん印象に残ったのは、お父さんのことで…

ホロコースト研究の第一人者で「ヨーロッパ・ユダヤ人の絶滅」著者の自伝。「もっと早く読むべきだった」と自分の不勉強を後悔した。

私が本書を読みたいと思ったきっかけの書評です。 http://d.hatena.ne.jp/somnu-ambulare/20090207/1234343882 著者はウィーン生まれだが、両親と共にナチスの迫害を逃れキューバ経由でアメリカに亡命した。コロンビア大学の院生だった時「試験的に書いた」2…

夜中に読み始め、3ページ読んだところで今晩は寝ないことにした。

尊敬する知人に勧められたので期待して読み始めた。期待を大きく上回っていた。内容はタイトルからおよそ想像がつくだろう。アメリカに奴隷制があった1800年代、ノースカロライナで生まれ育った著者の体験を記している。 奴隷制については「アンクル・トムの…

気分転換に書店へ行き、女性向け生き方本のコーナーを見ると「がんばらなくていい」という本と「がんばれ」という本にきれいに分かれることに気づいた。

基本、有名人が書いているから「がんばらなくていい」の方が当たりが柔らかい。読者は「○○さんもがんばらなくていい、と言っている」と安心できる。でも、私は「がんばらないと満足できる人生は歩めませんよ」という本音を書いてくれる人の方が好きなんだな…

米国の文化人類学者が行った、アルコール依存症患者を家族に持つ日本女性に関する研究をまとめたもの。

著者はプリンストン大学東アジア研究学部のエイミー・ボロボイ准教授。 アルコールに依存する夫や子どもと妻がどう向き合った/ているか、自助グループにおける参与観察やインタビューを通じて明らかにしている。インタビューに応じた女性たちは、現在70代を…

本書は、女性だけでなく男性にとっても利点がある「新しいフェミニズム」を提唱したものである。

著者のシェリル・サンドバーグがFacebookのCOOで2児の母であることは、日本でも広く知られており、彼女がTEDで行ったスピーチ「何故女性のリーダーは少ないのか」は、日本語字幕付きで公開されている 「新しい」といっても、日本において、イクメンブーム以…

表紙を見て「またか」と思う人もいるかもしれない。アフリカの内線や紛争については、すでにたくさん報道されている。いずれもひどい話ばかり。殺す。体の一部を切る。強姦。子どもを兵隊にする等々。

この本にもそういった、アフリカのひどい話が描かれている。そしてこの本は、それを終わらせるべく、立ちあがった女性達を率いたリーダーの半生だ。リーマ・ボウイさん、本書執筆時点でまだ30代。 著者は中流家庭出身で、内戦がなければ、普通に大学へ進学し…

シリコンバレー在住のコンサルタントが記した日本論というと「英語喋れない自分には関係ない」と思う人も多いかもしれない。

これは、そういう“普通の日本人”こそ読んでほしい本です。特に普通の働くお父さんお母さん達に。 題名の「パラダイス鎖国」に本書の趣旨は凝縮されている。豊かな先進国として美食と綺麗な街と安全と安定を享受している“パラダイスな日本”。一方で各種指標か…

東大院卒エンジニアの男性が、主夫になった経緯をまとめたノンフィクション。

著者は大手自動車メーカーに勤務していました。第一子出産後に2年間の育児休業を取得。妻は任期付きの仕事で育休を取れなかったという事情から、自分が育休を取りました。育休中に妻の米国赴任が決まり、1年間は家族3人で米国暮らしを経験。著者のみ帰国して…

私には4歳の息子と1歳の娘がいる。

ぜひ、この本を読んで欲しい。

著者はカリフォルニアに住む2児の父で、専業主夫。ライターとして本や雑誌記事を書く「仕事」もしているけれど、一家の大黒柱は妻であり、自分の主な仕事は「主夫」として育児をすること、とみなしている。 そして、自分と同じような主夫たちにインタビュー…

とても説得力がある育児本ですが、著者は育児の専門家ではなく経済学者です。米ジョージ・メイスン大学のブライアン・カプラン教授で専門分野は公共経済学や公共選択論。

趣旨はタイトルの通りで明快。今、望んでいるより多くの子どもを持つことを勧めています。なぜならそれはコストに見合う、利己的な行為だから。様々な研究データで説得してくれます。 子どもが畑仕事をしてくれたり、年老いた親を養ってくれるわけでもないご…

本の趣旨をひとことで言うと、ブログタイトルのようになります。

本のウェブサイトはこちら。 近々、邦訳が出ますので、ネタバレにならない程度に内容をご紹介。本書は「分業」「損失回避」「保有効果」「需要と供給」といった、経済学の考え方を応用して、夫婦喧嘩の原因を取り除いてみせます。 例えば、汚いけれど愛着の…

多国籍企業にとって「女性問題」は社会問題ではなく、ビジネス戦略だ。

本書は、BRIC+UAE、つまりブラジル、ロシア、インド、中国、アラブ首長国連邦の拠点を持つ多国籍企業の「現地女性活用」に関するもの。 ファイザー、グーグル、シスコ・システムズ、ゴールドマン・サックスなど、有名グローバル企業の事例が豊富で説得力が…